
タイ・バンコクの高級系のスーパーには、必ずと言っていいほど青果売り場に有機野菜コーナーがある。バンコクには駅直結の便利な立地にショッピングモールが多数あって、たいていその中にはGourmet Marketなど、ミドル層からアッパー層向けのスーパーが入っている。また、Villa MarketやTops、FUJIスーパーなど日系や高級系スーパーにも有機野菜のコーナーがあり、店舗によっては慣行野菜よりむしろオーガニックの割合が多いところも。有機野菜の売り場にはかなりのボリュームを割いていて、品目も多い。鮮度はまちまちだが全体的に悪くなかった。タイで有機野菜を買いたいと思ったら、いつでも容易にアクセスすることができるのだ。

それに引き換え日本のスーパーでは、いまだに青果コーナーに占める有機野菜の割合はかなり低いのが現状だ。スーパーの端っこにひっそりと追いやられた小さなコーナーで、“申し訳程度に”陳列されていることも多い。そのため、価格が高いのに鮮度がいまいち・・・というケースが多々ある。デパ地下などの高級百貨店内であっても、有機野菜の取り扱いはそう多くないのが現状だ。
野菜に関してだけを言えば、もしかしたらタイの高級スーパーでの有機の品揃えと販売量は、日本のオーガニックスーパーや自然食品店以上なのかもしれない。いずれにせよあきらかに、東京よりもタイ・バンコクのほうが、有機野菜へのアクセスが良いという印象を受けた。

N&P Organic

タイのオーガニックブランド N&P Organic(ナチュラルアンドプレミアムフーズオーガニック)は、タイの有機食品市場で約60%という圧倒的な国内シェアを誇るだけあって、どのスーパーに行っても目にした。

EUとUSDAオーガニック認証マークつき

タイ語+英語表記のものが多い
実は、タイの有機圃場面積も生産者の数も、この10年で倍増している。有機の農地面積は68,970ヘクタールで日本の3倍以上、アジア諸国の中では第8位の規模。一方、輸出に関してはアジアの中で5位と高い。EUとUSAへの輸出がほとんどを占めおよそ60%が米国向けだ。(FiBLE 2026年発表データより)
それだからか、輸出している野菜に関してはタイのオーガニック認証だけでなく、米国のUSDAやEUの認証マークも合わせて取得しているものもちらほらと見かける。

タイのオーガニック認証マーク
売り場をざっと見渡すと、欧米に多い裸売り、量り売りではなく、日本の販売スタイルと似ている。玉ねぎやカボチャ、果物など、裸売りのまま常温販売するものもあるが、葉物を中心に袋売りやトレイにラップをかけているものが多い。
タイのような高温多湿な気候では、常温での販売は菌が繁殖がしやすく傷みやすい。また常に冷房の効いた店内では乾燥により野菜がしなびるなど劣化しやすくなる。そのため、ローカル市場やリヤカーの引き売り、ファーマーズマーケットは別として、徹底した温度管理のもとで流通させる必要があるのだと思う。

プラ包装が圧倒的に多かった有機野菜だが、裸売り、量り売りしている売り場もあった。中には“バナナの葉っぱ”を活用したプラ不使用の包装も。
▽脱プラと活プラの狭間にあるタイ。売り場や飲食店で見たバナナの葉っぱの活用法
https://organic-press.com/world/world_report156/

有機野菜・葉物の裸売りは珍しい

量り売りの有機野菜で脱プラ

プラなし・バラ売りの有機マンゴスチン

日本では、とにかく有機野菜を差別化しようとPOPで農家さんの紹介をしたり、有機についての説明書きがあったりすることが多い。生産者の想いやその背景にある物語を伝えることで、それを付加価値として消費者にアピールする売り方は、特に専門店と言われるオーガニックスーパーや自然食品店でよくみられる。

個性的なデザイン!よく見るとカゴはイラスト

バナナ売り場は品目も量も多くてカオス状態

一方のタイのスーパーでは、“有機野菜コーナー”はあるもののPOPなどはあまりない。認証マークやメーカー(ブランド)のロゴでそれが有機野菜とわかるので、必要な人はさらりと買っていく。
一緒に売り場を視察した方からは「タイでは有機をあまり特別扱いしてないという印象だよね」という感想が聞かれた。確かに、青果売り場のかなりの面積を有機野菜コーナーが占めているので、高級スーパーに限って言えば、もはやオーガニックがスタンダードであるかのように見えてしまう。
もちろん、ローカルな市場や路上の露店で安価な食材を購入する多くのタイの低所得層の人々にとっては、有機野菜はなかなか手が届きにくい高級品だ。実際に購入しているのは、海外移住者や一部のタイの富裕層がほとんどかもしれない。
しかしながら、あれだけの売り場面積であれだけの品種と量の有機野菜がスーパーで販売されているということは、確実な消費者ニーズを掴んでいるからこそなのだと思う。今までタイの一部の富裕層に限定されていたライフスタイルやオーガニック消費に対する価値観が、準富裕層から中間層にまで、広く浸透しつつあることを示している。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。