サルベストロールが浮き彫りにする近代農業の問題点
自然界の恵みであるサルベストロールですが、近代農業で生産されている農作物において、その含有量は大幅に低下しています。その理由は栽培方法をみるとおのずと理解できます。
まず農薬の使用です。防カビ剤を含む農薬の使用により、害虫や真菌感染、雑草侵入などから農作物を守ることができるようになり、市場の需要に即した安定した状態の農作物を一定量収穫することが可能になりました。
しかし、本来植物が備えているサルベストロールの量は農薬の使用により低下しました。真菌の刺激が少なくなると、サルベストロールはほとんど生成されなくなるのです。
一方、オーガニック農作物は農薬を使用した農作物よりも、3倍から30倍の量のサルベストロールが含まれています。
サルベストロールは植物の辛味や苦味成分に含まれているので現代の消費者の好みに合わせて甘味を増す「品種改良」によっても含有量が低下します。また、ジュースの辛味や苦味を特殊なフィルターで除去したり、オリーブオイルの皮を不純物としてろ過する「食品加工」もサルベストロール含有量を低下させる一因となっています。
さらに「流通」も影響しています。
収穫期の後期、天敵の攻撃に対して脆弱な状態のときにサルベストロールの生成量は増加します。しかし、現在の流通システムでは、農作物を生産地から離れた場所でも安定した量を供給することを見据えて、サルベストロールが十分に生成される前に早期収穫してしまうのです。
皮や種、中皮や根など、廃棄されやすい部位に多く含まれる成分
サルベストロールが多く含まれているのは、オーガニックのリンゴ、イチゴなどのベリー類、柑橘類、キャベツやブロッコリー、ハーブ類などの野菜・果物です。(図6)
オーガニックな農産物の皮に現れる黒い斑点がサルベストロールです。食材を選ぶ際に、見た目がきれいなものを選ぶ消費行動がサルベストロール不足の原因ともなっています。
サルベストロールは皮や種、中皮や根などに含有されています。これらの部位を取り除くことでサルベストロールの摂取量は低くなってしまいます。皮はむかずに調理するなど食べる際には気をつけ、果物ならば、皮や中皮も使用したジャムやジュースなどで摂取するのがおすすめです。
また、サルベストロールは熱に強いのが特徴で、加熱によって失われることはありません。水に溶けやすい性質を持つので茹でた場合は茹で汁も必ず摂取することをおすすめします。
日常生活の中にある阻害物質を知り有効性を最大化する
せっかくサルベストロールを摂取しても、阻害物質により効果が半減、もしくは消失する場合もあります。
通常では、サルベストロール濃度が一定に達した場合、がん細胞は死滅しますが、阻害物質によってがん細胞に変化が見られなくなることがあります。その原因となる避けたい食事、サプリメント、生活習慣を一覧にしました。(図7)
阻害物質は大きく分けて3つのグループに分けられます。
1.CYP1B1の働きを阻害するもの
代表的なものが「農薬、殺菌剤、防カビ剤」です。CYP1B1の働きを阻害し、サルベストロールの代謝や活性化が阻害されます。食事で避けるのはもちろん、ゴルフ場や農場など、農薬などが散布されがちな場所への立ち入りも避けるのが賢明です。
また、びわの種や亜麻仁などに含まれる「ビタミンB17」はCYP1B1の発現を阻害し血液中の酸素の量を低減させ、サルベストロール代謝に必要な環境を壊します。亜麻仁油を使用している人は、成分が似ているえごま油に置き換えることをおすすめします。また、グレープフルーツに含まれるナリンゲニンや一酸化炭素(タバコ煙など)も強力な阻害物質です。
2.サルベストロールのがん細胞への侵入を阻害するもの
侵入を阻害する「人工甘味料」の摂取にも注意が必要です。サルベストロールが細胞膜に侵入する際、βグルクロニダーゼという酵素が必要になりますが、人工甘味料はβグルクロニダーゼを阻害し、サルベスタロールは細胞膜通過ができなくなってしまいます。
3.肝機能の処理能力に関する問題
肝機能の処理を妨げるのが、栄養素を豊富に含むジュースの多量摂取です。サルベストロール分子は肝臓で酵素によって糖と抱合されますが、大量の栄養素が一気に流れ込んでくると、肝臓は何と結びついたらよいか優先順位がつけられなくなります。ジュースの容量はグラスで1日3杯程度に制限し、CYP1B1が活性化する時間帯は避け、午後3時以降に摂取するようにしましょう。
サルベストロールの働きを助ける補助因子となるのが、ビタミンC、鉄、マグネシウムなどの栄養素です。CYP1B1の活性リズムや阻害物質、補助因子を知り、サルベストロールの有効性を最大化したいですね。
日本人のサルベストロール不足
日本以外の先進国では1990年代頃からガンの死亡率が減少しています。アメリカでは1991年から2015年までの24年間で26%減少しています。
日本だけがガン患者が増える理由は明確ではありませんが、その要因のひとつとされているのが食事です。肉や小麦の消費量が増える一方で野菜の摂取量が減り続けています。そしていまや、アメリカ人の一人当たりの野菜消費量を下回っています。
WHO(世界保健機関)は、病気の増加を抑制する取り組みとして、野菜と果物の摂取を促進させる世界的キャンペーンを打ち出しています。
ここに野菜や果物と病気(ガン)の関係性を分子レベルで解明したサルベストロールの発見は注目を集めています。
日本もこれまで以上に野菜と果物の摂取とその品質(オーガニック)の必要性が問われることになるでしょう。
※この記事は「ORGANIC VISION」第11・12号の連載「オーガニックの可能性」からと「ガンが嫌なら野菜を変えなさい」の記事を引用し、構成しています。
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ガンが嫌なら野菜を変えなさい(veggy5月号増刊)
監修・石黒 伸(アクアメディカルクリニック院長)
雑誌概要
誌 名: ガンが嫌なら野菜を変えなさい (veggy5月号増刊)
監 修: 石黒 伸 (アクアメディカルクリニック院長)
著 者: サルベストロール研究会
判 型: A4判
定 価: 864円(本体800円)
発売日: 2019年4月15日
発行元: キラジェンヌ株式会社
発売元: キラジェンヌ株式会社
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一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)発行
「ORGANIC VISION」 vol.11 vol.12
▽一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ)
http://ovj.jp/
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※サルベストロールについて、また相談できる医療機関についてのお問い合わせは、サルベストロール研究会までご連絡ください。
▽サルベストロール研究会
https://salvestrol-labo.com/