Natural Products Expo West 2023で注目のキーワード、「アップサイクル ( Upcycling / Upcycled )」。気候変動等の地球環境の問題、パンデミックや紛争、人口増加により生じる食料の需要増など、様々な要因により起こりうる「食糧危機」問題を背景に、食のあり方を見直す動きが加速している。

アップサイクルは、本来は廃棄されてしまうものに新しい価値をプラスして、別の製品に生まれ変わらせること。アップグレード(価値を高める)することが意味合いに含まれる。例えば古くなったタイヤをバッグなどによみがえらせたり、廃棄されるバナナの繊維から生地を作ったり、廃棄されるパンを原料にビールをつくるなど、捨てられてしまう部分を独創的なアイディアで別の用途に作り変えることを言う。

そのため、いわゆる“規格外”、サイズや色、形などが出荷規格に適合していないことから市場に出回りにくい農産物を、加工食品にするということがアップサイクル?になるのかというのは、判断が分かれるところかもしれない。今回のエキスポでは、廃棄されてしまう可能性のある規格外野菜や果物を使って、ジュースやソース、ピクルス、スナックなどに使うことも、広義で「アップサイクル」と表現することが多いようだと感じた。


Uglies Kettle Chips は、大きすぎたり小さすぎたり、色が違ったり傷があるものなど、少し見た目に難ありのものや糖度が基準に満たないなど、いわゆる規格外の芋を使用。農家の余剰作物が使われる場合もあり、こういった取り組みが廃棄物を減らし、農家を支援することにつながっている。創業以来「1,200万ポンドのじゃがいもを救った!」そうだ。

食品廃棄物の削減に加えて、遺伝子組み換え不使用、グルテンフリーなど品質へのこだわりも。さらに、Uglies Kettle Chips の利益の10%を慈善団体に寄付するなど、社会に貢献していく活動も行っている。


こちらは、Sweet Potato Chips。チップスの大きさは不揃いだが、美味しさに変わりなし!


Uglies Kettle Chips は、Upcycled Food Association の認証を掲げていたが、どちらかといえば、Upcycled より「No Waste!」捨てない、無駄にしない、というのがコンセプト。そもそも、規格外野菜は安定供給もできないので、1回の生産量(バッチ)も少ないという。一般的に大量生産することで生産効率は上がり、コストは削減されるが、そのぶん売れ残りの廃棄も生じやすくなる。必要な分を、必要なだけ。無駄にならないような供給体制を実践している。

日本でも、いわゆる規格外野菜を使用する取り組みは加速しているが、一番の問題は加工工場かもしれない。そもそも不揃いの農産物が、通常のラインの機械に合うかどうか?の問題。加工を手作業で行えば、その分工賃がアップする。歩留まりが悪ければ原価も上がるし、1回の製造が少なければ、そのぶん単価は上がる。

また、メーカーは、安定供給できなければ“棚落ち”になる可能性、そして販売価格が高くなると売れないのでは?という不安・・・。では、単価を抑えるためにどうする?規格外野菜を安く購入する?なんてこと、まさか言わないですよね?

そうなったら、本末転倒。

規格外野菜の活用だけでない、オーガニック農産物の加工でも、実は同じ問題を抱えている。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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