SIMPLiは、南米の会社で最初にリジェネラティブ・オーガニック認証 (ROC)を取得した、穀物や豆、キヌアとルピニ豆などを扱う原料会社。ペルー出身のSarela Herradaと夫のMatt Cohenによって2020年に設立された、まだ新しい企業だが、2021年にはシードラウンドでの資金調達を実施。影響力のある投資家たちからの追加の支援を受けている。

また、それに続き、Whole Foods Marketとのパートナーシップも発表され、RO認証のレッドキヌア・ホワイトキヌア、三色のキヌアが一部のWhole Foods Market店舗で販売が開始された。健康的な冷凍食品のD2C「Daily Harvest」、米国のサラダチェーン「Sweetgreen」ピザチェーン「&pizza」などともパートナーシップを結び食材の卸売りをするなど、順調に成長を続けている。

また、翌年のNatural Products Expo East 2022 では、より革新的でより良い未来に向けた製品に与えられるNEXTYアワード賞も受賞。そしてこの春、2023年4月からは製品ラインを大幅に拡大し、全国のWhole Foods Marketで8アイテムが並ぶ予定だという。

リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)

リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)は、2017年にパタゴニア、ドクターブロナー、ロデール研究所といった米国ブランドが中心となって立ち上げられた。リジェネラティブ(Regenerative)は、“再生”を意味している。不耕起栽培や省耕起栽培のように、土を耕さず雑草や植物などで土の表面を被覆する等で土壌の再生を促す。有機認証の取得を前提とし、土壌の健康や動物福祉、社会的公正に関しても基準を満たす必要があり、その達成度に応じてブロンズ、シルバー、ゴールドといった3つのレベルが設けられている。2019年に実施したパイロット版プログラムを経て、2020年8月に正式にローンチされた。

持続可能なパッケージング

SIMPLiのオーガニックキヌアは、USDAのオーガニック認証、フェアトレード認証、そして、リジェネラティブ・オーガニック認証(ROC)のブロンズを取得している。それだけでも素晴らしいのだが、袋は紙製のものを使用。開け口の部分は糸を使い、ミシン縫いで綴じられている。

よくある「オーガニックなのに、何故プラスチックを使っているの!?」という批判や、「オーガニックなんだから、容器もエコであるべきだ!」という消費者の要望にもしっかり応え、社会的課題に対しての態度を明確に示している。

日本でも、フィルムや容器を環境配慮型PETにしたり、植物性由来のものに変更するといった動きは加速している。しかしながら、原材料や商品自体が環境にやさしくオーガニックであっても、包材まではなかなかこだわれない、という企業は多い。

メーカーとしては「生分解性のある循環型の包装を使用したくても、現実問題として選択肢も少なく、コストがかかるから難しい・・・。」というのが本音。包材の原価が高くなると、ただでさえ価格が高いのに、もっと高くせざるをえず、消費者が手を出しにくくなる、売れなくなってしまう、という懸念があるからだ。

量り売りなど、販売方法を工夫することでプラ容器や包材の使用量は減らせるが、まだまだ、店舗で取り入れているところは少ない。スーパーの棚に並ぶほとんどの食品は、フィルムを使った袋に入っている。中身が見えることで安心感を持つ消費者も多いことから、紙がベースでも、中身が見えるように一部をプラにしている包材もある。品質を維持するためもあるし、虫や異物の混入を防ぐため、シェルフライフをできるだけ伸ばしたいという流通上の理由も大きい。

世界的にプラスチック削減の動きが加速している中、いま、食品包装容器の流れは環境配慮型へと移りつつある。

そういえば、昔の商店街にあったような乾物屋さんは対面の量り売りだったし、豆類やお米を入れる袋は紙製だった。今後の、食品包装容器メーカーによる環境配慮型素材や製品の開発にも期待をしつつ、まずは今できそうなことから。穀類や豆類といった農産物から、紙袋へ回帰するのもアリなのではないか思う。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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