オーガニックプレスにて2023年3月15日公開された記事「Natural Products Expo West 2023 米国オーガニック&ナチュラルのトレンド」や、2023年4月2日公開の記事「キニナル!?蜜蜂・養蜂を必要としないプラントベース蜂蜜 PLANT BASED HONEY」でも、PRECISION FARMENSTATION (精密発酵)技術についてはオーガニック業界の内外で懸念の声、賛否の声があることについて触れてきた。

実は、今回の「Natural Products Expo West 2023」では、精密発酵やゲノム編集をはじめとする「GMO 2.0(次世代遺伝子組み換え技術)」を利用した製品を展開する企業と製品の出展が許可されたことについて、ナチュラル・オーガニック業界内で強い反発があったという。

※精密発酵(precision fermentation)には微生物をゲノム編集技術等によって加工する工程があり、いわゆる“遺伝子組み換え微生物”を培養することで、動物性タンパク質などの特定の機能性成分の生産が行われる。betterland社のCOW-FREE-MILK、Melibio社のPlant-Based Honey、Perfect Day社の技術を使用したBrave Robot Animal-Free Ice Cream など、微生物を使って特定の成分を(たんぱく質など)作り出す技術を使用したプラントベース食品はすでに流通している。

米国オーガニック専門メディアである Organic Insider の報道によれば、Natural Products Expoが「Natural」を看板にしている展示会であるにもかかわらず、精密発酵など“GMO 2.0”の技術が容認、奨励されていることに対して反感が高まっているという。GMO(遺伝子組み換え)は、特に有機農業にとっては相いれないもので、有機業界の多くの人々からはNew Hope社が主催するこの「Natural Products Expo」とは別に、オーガニックおよび非遺伝子組み換え食品に特化した展示会が必要なのではないかという声が上がり、代替展示会についての議論まではじまっている。

また、アメリカ・カリフォルニア州で1969年に創業された、老舗の独立系オーガニックスーパーマーケット Good Earth Natural Foodsの共同創設者であるMark Squire氏は、New Hope社に対して、遺伝子組み換え技術を用いて製造された原料の使用を禁止するよう求める請願活動を開始している。

このような米国の動きは、いずれ日本のオーガニック業界にも波及する問題だと思う。日本国内でもすでに精密発酵を用いたフードテック企業はあり、透明性の高い情報開示がないまま、今後この技術を使った製品がいつの間にか増えていく可能性はある。その時、ナチュラル系イベントや展示会での出展はどうあるべきか?米国同様、今後議論が起こるかもしれない。

今でも、特にプラントベース(PLANT BASED)やVEGANといったジャンルに関しては、来場者層とのミスマッチのような基準の製品も見られている。SDGs、エシカル、サステナブル、といったコンセプトとオーガニックとは親和性が高いので、ここ数年はあえてターゲットを絞りすぎず、間口を広げているイベントが多い印象だが、一方でそこに不満を持つオーガニックの出展者も少なからずいる。

今後のNatural Products Expo、そして日本の展示会はどちらの方向へ進むのか?については、これからも注視していきたいと思う。

また、日本の自然食品店、オーガニックスーパーの商品選択基準についても同じことが言える。遺伝子組み換え製品については言うまでもないが、「親和性が高いから」「トレンドだから」というだけでナチュラルとはいえないヴィーガンやプラントベースフードを扱っているとしたら?こだわりの強い顧客の中には、同じ厳格さを求め不満を持つ者もいる。

これからのオーガニック系展示会やオーガニックスーパーなどの専門店が生き残りをかけるために。あるいは、オーガニック市場の成長のために。様々な選択肢を用意することで潜在客を掘り起こすか?あるいは、一昔前のように厳格な基準を掲げターゲット層をグッと絞り込んでいくべきなのか?

悩ましいところ。

▽参照:Organic Insider
Alongside Encouraging Trends that Emerged at Expo West 2023, Tension is Growing Over GMO 2.0
https://organicinsider.com/newsletter/natural-products-expo-west-2023-organic-food-show-recap-your-weekly-organic-insider/

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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