アメリカで開催された展示会「Natural Products Expo West 2023」でも、発酵食品が注目されていたが、BIOFACH 2024の会場も同様に、キムチ(KIMCHI)を中心とする乳酸発酵の漬物等を紹介するブースがちらほら見られた。

ドイツの伝統的な漬物といえば、ザワークラウト。キャベツを乳酸発酵させた酸味のある漬物で、ソーセージや肉料理の付け合わせなどに欠かせない発酵食品だ。そんな食文化がベースにあるので、ドイツをはじめとするヨーロッパでもキムチが魅力的な食品として受け入れられる可能性は高い。

出展者、ドイツのミュンヘン近郊にある食品メーカー complete organics は、キムチはOriginal(オリジナル)、Daikon(大根キムチ)、Mildes(マイルドキムチ)、Spicy(スパイシーキムチ)、gurken(胡瓜キムチ)の5種を発売。キムチの他にも、カラフルでユニークなレシピのザワークラウトをはじめとする漬物、漬け汁を使ったショットドリンクなどユニークな製品を開発している。

すっきりとしたおしゃれなデザイン。ガラス瓶詰で、冷蔵で流通。2月に購入して賞味期限は12月8日?だとすると、冷蔵とはいえこんなに日持ちするのか、発酵が進んで瓶が割れないのか?などの疑問がふと頭によぎったが、乳酸発酵のザワークラウトも、瓶入りで日本に輸入され流通しているので大丈夫なのかも?

実際に現地のオーガニックスーパーで販売されていたので、Spicy(スパイシーキムチ)を購入し試してみることに。

私たちがイメージするキムチは白菜が主原料だが、“Weißkohl”キャベツを使用している。Spicy(スパイシーキムチ)の原材料は、白キャベツ (90%)、大根、海塩、赤唐辛子フレーク、ニンニク、ネギ、唐辛子、パプリカパウダー、ビーツパウダー、生姜、ホースラディッシュ。動物性原料はもちろん、砂糖や甘味料、果物類、穀類も使用していない。

ちなみに、原材料はローカルの有機野菜を中心に調達しており、いわゆる規格外など不揃いの野菜を中心に買うようにしているとのこと。季節的に入手できない食材や産地が限定されるようなスパイスなども、オーガニック品質のものをフェアトレードで透明性のある方法で調達。ベジタリアンやヴィーガン人口の多いドイツということもあって、伝統的なレシピではなく動物性原料を使用せずに作られ、製品としての有機の認証、そしてヴィーガン認証も取得している。

韓国の伝統的なキムチの多くは魚介の塩辛や魚醤などが使われる。このような食材はオーガニック認証のものは無いことがほとんどなので、オーガニックキムチの認証を取得するには、認証のとれない食材は使わないか、何かで代用するしかない。アレンジしたというよりは必然的にヴィーガン仕様になるのかも?

では、ヨーロッパの人たちの口に合うようローカライズされたキムチはどんな味なのか?というと、韓国や日本でなじみのあるキムチとはちょっと違って、かなり酸味が強い。“酢漬け”ではなく、ちゃんと“乳酸発酵”させているのがポイント。発酵がかなり進んでいる感じだが、これはこれで、とても美味しい。ザワークラウトに近い味かも?魚介を使っていないので複雑な旨味は出せないが、サラダ感覚でさっぱりと食べられる。日本ではコクや旨味があって甘めの味つけのキムチが好まれる傾向にあるが、ヨーロッパではザワークラウトやピクルスのように、酸味が強いものが好まれるのかもしれない。

BIOFACH 2024 のJAPAN PAVILIONでは、京都で有機認証の漬物を作っている株式会社KYOZUKEさんが出展されていて、クリームチーズと「しば漬け」を合わせてスプレッドのようにして試食していたところ、とても好評だったそうだ。

海外では今、発酵食品がトレンド食の一つとなっている。しば漬け、ぬか漬け、たくあんなど、日本の伝統的な漬物の多くは、乳酸発酵されたもの。KIMCHIの次は、TSUKEMONO(Japanese style Pickles)が、海外のオーガニックスーパーに並ぶ日もそう遠くないかもしれない。個人的には日本の味、伝統製法を海外の方にも知ってほしいという思いはあるが、味覚や嗜好には大きな違いがあるので、海外展開をするならばローカライズ化も時には必要なのかも。味だけでなくパッケージやデザインなども含めて。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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