海外のオーガニックスーパーなどで多く見られる青果売り場では、平台や傾斜タイプの青果台、または壁面の冷蔵ショーケースに、芸術的に野菜や果物を積んでいる印象がある。このような、いわゆるボリューム陳列、ビジュアルで魅せるタイプはアメリカのオーガニックスーパーに多いのだが、これに対し、ドイツのオーガニックスーパー「Basic」「denn’s Biomarkt」「ebl naturkost」などの青果売り場では、野菜が入ったケースをそのまま売り場に置くという、以外にもシンプルで実用的なスタイルが多かった。
青果売り場の照明、ショーケースなどの冷蔵設備が無いことも多く、無駄なエネルギーや資源を使わない、省エネ・省資源、環境に配慮する精神も感じられる。
青果売り場で活用されていたのは、日本で俗にいう折り畳み式の「通い箱」「ミニコンテナ」のようなBOXだ。これらのボックスは、いくつかのサイズがあるようだが、縦でも横でも、組み合わせによって売り場できれいに収まるように設計されており、中に入れる野菜の大きさや量に合わせてサイズを選択し、ぴったりときれいに収まるよう配置される。店舗の規模や取引形態にもよるが、一般的に集配、物流拠点からこのような通い箱に入れられ、各店舗へと届けられることも多いようだ。
日本の自然食品店でよく見られるのが、ダンボールをそのまま売り場で使うスタイル。ジャガイモや人参、玉ねぎのような根菜が入った段ボールの蓋の部分をカッターで切り、切った部分にマジックで価格を手書きする・・・。それがまた独特で味のある、良い雰囲気をもたらす場合もあるが、段ボールの大きさや色や文字などもバラバラなので、統一感が無く乱雑な印象を与えてしまいがちだ。
また、木箱やカゴなどを使ってナチュラルなイメージ作りをするお店も多いのだが、青果物の陳列の手間、売り物が減った時のスカスカ感を埋める作業、閉店後、別のカゴやケースに移し替えて冷蔵庫へ保管する手間、そして、ダンボール等をつぶす手間、ゴミの問題など、細かな作業の積み重ねで時間をとられてしまうことが、現場での負担となっている。
それに比べてドイツのオーガニックスーパーで見られた、このグリーンの通い箱(組み立て式のケース)。木の素材などのようなぬくもり感がなく見た目に少々味気なさもあるが、陳列や鮮度管理にも手が行き届いているため、整然と並ぶ姿から清潔感も伝わって来る。良く計算されていて、それでいて効率が良い売り場づくりだ。
街中のマルシェでも、グリーンの通い箱が利用されていることが多かった。
毎回テントを建て、売り場の組立と撤収をしなくてはならないマルシェでは、なおさら効率的な売り場づくりをする必要がある。通い箱をそのまま積んで売り場をつくり、台の上にケースごと青果物を入れて販売する、このようなスタイルが一般的のようだ。
もうひとつ、ドイツオーガニックスーパーとの違いがある。それは、必ずしも店舗の目立つところに野菜売り場があるとは限らない、ということ。日本の店舗では、野菜は一番お客様の目を引く店頭や入り口付近で販売されることが多い。四季のある日本では、店頭で日々変わる色とりどりの野菜が、お店の品揃えの良さやイメージに好印象を与えてくれるからだ。旬の野菜や果物を店頭に置くことで季節感や、鮮度感を消費者に伝える役割もある。
ところが、海外の店舗のレイアウトは必ずしも日本と同じではない。むしろ、目立たない店内の一番奥や隅にあることが多いかもしれない。ドイツのオーガニックスーパーでは、青果売り場がガラス張りの「個室」となっている店舗も多く見られる。他の売り場と分けられることで、直射日光やホコリから青果物を守るとともに、野菜くずや土などで汚れやすい、店内の他の売り場の床の掃除負担も軽減されそうだ。
この個室内の温度は、たいてい常温。よって、遅い時間に行ったお店では、午前中に比べて若干野菜の元気がなくなっていることもある。「見た目」や「鮮度感」を大事にする日本では、冷蔵ケースを含め、様々な工夫で野菜の鮮度や見た目を1日保とうとするのだが、ここドイツでは消費者の求めるレベルは、日本ほど厳しくないのかもしれない。形や見た目だけにとらわれず、むしろ、エコという観点から、過剰な包装や冷蔵庫や照明にかける無駄な電気消費のほうが問題である、と考える消費者も多いのではないだろうか。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。