東京2020オリンピック・パラリンピック開催時に海外記者や選手が発信したSNSで、日本のコンビニのおにぎりの話題が注目されたのはまだ記憶に新しい。その後、新型コロナウイルスの収束でインバウンドの需要も順調に回復。訪日外国人旅行客による食体験をきっかけに、日本を象徴する食のひとつ“おにぎり”の海外展開も加速していきそうだ。

日本ではなかなか進まない、おにぎりの有機認証。ドイツのRice UP onigiriは、既に2011年からベルリン駅構内のいわゆるキオスクのような小さな店舗で“オーガニックおにぎり”の販売をスタート。今ではBIO COMPANY、ALNATURA、Denn’s や Basicといった専門店をはじめとする、オーガニックスーパーで販売されている。

そんなRice UP onigiriが、BIOFACH 2024に出展していたので、実際に試食をさせてもらった。

現在の主なラインナップ
・Lachs & scharfe Pflaume(サーモン&スパイシープラム)
・Japanische Erdnuss(日本の落花生)
・Avocado-Koriander-Limette (アボカド・コリアンダー・ライム)
・Kürbis-Sesam(かぼちゃ・ごま)
・Edamame-Wasabi(枝豆・わさび)
・Lachs & Meerrettich(サーモン・わさび)
・Räucher-LAX Teriyaki(てりやきスモークサーモン)※人参の代替サーモンVEGAN

日本の伝統的なおにぎり、梅干しや昆布、鮭のようなシンプルな具材ではなく、ローカライズされたユニークなフレーバー。包材は、上部のつまみを引いて簡単に開封できる、日本のコンビニのおにぎりと同じフィルムタイプのものだ。

Edamame-Wasabi(枝豆・わさび)を試食させてもらうことに。ちなみに、わさびは有機のものが入手できないため、有機の西洋わさび(ホースラディッシュ)を使ってるとのことだった。お米はイタリア産で海苔は韓国産らしい。原材料は、「炊いたすし飯、枝豆、水、ひまわり油、海苔、ホースラディッシュパウダー、海塩、ライム果汁、ごま油、グアーガム、砂糖、タピオカ澱粉」で、原材料は100%有機認証。(対象外の水と塩を除く)製品としても認証マーク付きのオーガニックおにぎりだ。1個3.29ユーロ(7%の付加価値税込)。為替レートにより変動するものの、2月時点で日本円に換算すると500円越えとなる超高級おにぎりに・・・。

早速試食してみると、お米は、私たちになじみのある“日本のご飯の味”とはちょっと違うかも?お米そのものの味の違いもあるが、そんなに違和感はないものの、ごはんに酸味を感じた。原材料欄にも“すし飯”と書かれているし、保存力を高めるためか、炊くときに少量の酢を使っているのか、もしくはライム果汁のせいなのかもしれない。

さらに気になったのは握り方だ。おそらくは機械を使って握られたものだと思うが、かなりぎゅうぎゅうに、米粒に隙間がなくなるくらい圧がかけられている印象だ。そのため、日本のおにぎりのような、食べたときにほどける感じが無かった。もしかしたらこの固い握り方は、粘りの少ない海外産のお米だからこそなのかもしれない。

お米の品種やその炊き方、ふわりとした握り方、パリパリの海苔、というのが美味しさを左右する。海外らしいユニークな具材も意外とおにぎりに合うので、具材をローカライズするのは良いと思うが、お米を日本産にすればもっと美味しくなるはず!やはり、おにぎりには粘りのある日本のお米が合うと思う。このおにぎり人気が、国産有機米の輸出促進や販路拡大の好機にもなる。海外の方が旅行で日本を訪れた時には、是非日本の美味しいおにぎりを味わってもらい、その味の記憶を自国に持ち帰ってほしいなと思う。

日本でもオーガニック専門店では、有機米や有機梅干しで作られたおにぎりが購入できる。加工工場の認証がとれないと有機JAS認証の取得はちょっとまだハードルが高いが、2022年から藻類の有機表示が認められるようになったので、国産海苔で有機認証がとれれば100%オーガニック食材でおにぎりは作れるかも?(※海苔無しの塩むすびなら今も可能)

梅干、高菜、昆布、納豆、大豆ミートなど、具材によってはORGANIC & VEGANおにぎりも可能だし、小麦不使用の食材を選べばグルテンフリーにもなる。在日外国人、訪日外国人旅行客にベジタリアンやヴィーガンも多い。グルテンなど食の制限がある人も多いので、コンビニで買えるおにぎりに選択肢があったなら、そんなニーズにも応えることができる。もし、東京2020オリンピック・パラリンピックの時に間に合っていれば、おにぎりを通して日本の美味しい有機のお米がPRできていたかも?と今更ながら思う。

ちなみに、大手コンビニエンスストア「セブン-イレブン」だけでも、年間約22億個(2018年度:約22億7千万個)おにぎりが売れているとか。仮におにぎり1個に使われるご飯の量が100g(お米に換算して仮に45g/個、およそ10万t/年)とすると、おにぎりのラインナップのうち1%でも有機米のおにぎりにしてもらえたら、単純計算で年間におよそ1,000t有機米の消費が見込まれる?

机上の計算ではそうであっても、実際には単価が上がり同じように売れないかもしれない。それでも、大手コンビニエンスストアチェーンが、1社でも有機米のおにぎりをラインナップに加えてもらえたら、インパクトは大きい。

将来的に、全国のコンビニで、“オーガニックおにぎり”が普通に買える日がくることを期待したい。

【参照】
2020年7月 セブン&アイ・ホールディングス
「お母さんがつくったおにぎり」という開発目標を共有し、おいしさをさらに進化

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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