
タイ・バンコクの高級系のスーパーの青果売り場で、「ORGANIC」と同じくらい、やたらと存在感を放っていたのが「HYGIENIC」の文字。ハイジェニックというのは「衛生的な」を意味している言葉だ。

袋に「HYGIENIC」と書かれている
タイでは、スーパーや市場で販売されている一部の野菜や果物から、度々安全基準値を超える農薬が検出されたと報告されており、多くの消費者が食の安全に不安を抱いている。
記憶が新しいところで言うと、2024年10月24日、タイ消費者財団(タイPAN)と消費者財団、タイ食品医薬品局(FDA)が行った、バンコクとその周辺地域で販売されているシャインマスカットの農薬残留検査の結果で、95.8%のサンプル(23/24)が法律で定められた残留基準を超え、50種類の農薬が検出されたというニュースが話題となった。

ROYAL PROJECTの野菜(GAP認証も取得)
農薬だけではない。タイの高温多湿な気候においては、感染症や食中毒なども含めた食を取り巻くリスクは高い。食品衛生管理があまり良いとは言えないローカル市場などで流通する食材に対して、不安を抱く消費者も少なくないだろう。
このような社会背景もあり、タイの消費者はよりクリーンで安心できる“HYGIENIC(ハイジェニック)”、つまり衛生的な野菜を求めていて、ORGANIC(オーガニック)はその延長線上にあるに過ぎないと感じる。
もともと日本で流通している野菜は、基本がハイジェニックなので、そこがタイとは異なるところ。日本だと有機野菜は何かちょっと特別なものとして認識されるが、タイの消費者にとってハイジェニックとオーガニックに大きな違いはなくて、境界線がはっきりとは引かれていないのかも。
▽バンコクの高級スーパーでは“有機野菜コーナー”がスタンダードになっていた
https://organic-press.com/world/world_report157/

HYGIENICコーナー / A-Best社の野菜
HYGIENIC コーナーに売られていた、「A-BEST」のロゴがついたこの野菜ブランド。農薬の管理や栽培履歴(トレーサビリティ)の記録が管理されるなど、基準をクリアしたタイのGAP(農業生産工程管理)認証を取得した野菜を主に扱い、加工から流通の過程においてもGHP(Good Hygiene Practices)やHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の衛生管理基準を遵守して安全性を確保。
商品ラベルにあるコードをA-BEST社のWebサイトにある「Traceability Service」に入力すれば、その野菜のトレーサビリティを追跡することも可能だ。

価格差はどれくらい?
「ORGANIC」と「HYGIENIC」の野菜の価格を調査してみた。
※調査は2026年5月中旬 1THB=5円として計算

写真左がハイジェニックで右がオーガニック
①きゅうり 2本 (1.35倍)
HYGIENIC: 0.322 THB / 1.61円 / 100g ( ※119g / 38.32 THB / 192円)
ORGANIC: 0.436 THB / 2.18円 / 100g (※165g / 71.94 THB / 360円)
②キャベツ 1個 (1.1倍)
HYGIENIC: 0.486 THB / 2.43円 / 100g (※75g 36.45 THB / 182円)
ORGANIC: 0.554 THB / 2.77円 / 100g(※98g 54.29 THB / 271円)
③スイートコーン(1.35倍)
HYGIENIC: 17 THB / 85円 / 100g(※130g 22.1 THB / 110円)
ORGANIC: 23 THB / 115円 / 100g (※100g 23 THB / 115円)
④ミニ人参(1.1倍)
HYGIENIC: 45 THB / 90円
ORGANIC : 50 THB / 100円
⑤中サイズの人参3本(約300〜500g)(1.2倍)
HYGIENIC : 40 THB / 200円
ORGANIC: 49 THB / 245円
※スーパーの半額程度と推定すると市場では10~20 THB(100円前後?)

HYGIENIC 野菜コーナー
日本で有機農産物と慣行農産物の価格を比較すると、概ね1.5倍から3倍ほど有機野菜のほうが高い。
日本にもJGAP(Japan Good Agricultural Practice)があるが、この認証を取得していなくても日本で流通している野菜は安全に生産管理されているので、このタイでいうHYGIENIC(ハイジェニック)と日本の慣行野菜は、ほぼ同等とみなしてよいと思う。
それを踏まえてORGANICとHYGIENICの価格を比較調査してみたら、有機野菜はハイジェニックの1.1~1.35倍。日本ほどの割高感は感じられなかった。

一方で、実際にはローカルの市場や露店、リヤカーでの野菜のひき売りを利用する消費者も多い。値札がついていないため価格は不明だったが、高級スーパーで販売されている野菜との価格差はかなり大きく、およそ1/2~1/3程度の値段で買えるとか。
所得格差が大きく貧富の差は必ずしも小さくないタイにおいては、オーガニックやハイジェニックな野菜を購入できる海外からの移住者や一部のタイの富裕層~中間層と、日常的に安価なローカル食材を消費している中間層以下との二極化が鮮明になっていた。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。