2023年3月7日~11日、アメリカ最大規模を誇るナチュラル・オーガニック・健康・エコ関連製品のトレードショー「Natural Products Expo West 2023」が、Anaheim Convention Center(アナハイム・コンベンションセンター)にて開催。主催者の発表によると、およそ3,000社が出展、うち898社が新規出展。65,000人以上の業界関係者を動員し、大盛況のうちに幕を閉じた。出展社も来場者も、マスク姿は全くと言っていいほど見られず。会場は多くの人で埋め尽くされ熱気に包まれていた。

今年の ナチュラルプロダクツエキスポでは、ある1つの原料やダイエット方法が目立つようなトレンドはなく、食品業界では「PLANT BASED FOOD」中心の流れとなり、もはやスタンダード化しつつある印象。代替肉に関しては、4年前に出展していたメジャーな企業は見当たらなかったが、中小のメーカーが、様々な個性的な商品を紹介していた。プラントベースフードの多くはVEGANの認証マークもついている率が高い。当然のようにVEGAN仕様なのだけど、マーケティング的にはPLANT BASED を使う傾向にある。もちろん、ORGANIC 、GLUTEN FREE マークがすべてついているものもとても多い。4年前のKETOやPALEOといったワードはまだ存在はしてるものの、目立たず。昆虫食も、見当たらず。CBDもあるものの、それ一色!という雰囲気は全くなかった。

プラントベースミート(代替肉)は、既に味付けがされハンバーガーのパティの形に成型されているタイプや、チキンナゲットタイプ、餃子タイプ、プルドポークのレトルトなど、調理が簡単で済む食品が増えている。大豆由来だけでなく、豆や穀類、そして海藻、ジャックフルーツを原料にするなど、素材のバラエティーも豊かに。ビーフ、ポーク、チキンのほか、ラム風のものも。そして見た目もまるで本物!?と驚くベーコンやイタリアの生ハム風のものなど、代替の加工肉もあり、どれも見た目と味のクオリティが、数年前に比べ格段に良くなっていた。

プラントベースミルクは、オーツミルク、カシューミルク、アーモンドミルクを中心に様々な素材のものが流通しているが、実際にはオーツミルク一強と言っても良い印象がある。豆腐をはじめとする大豆製品になじみのある日本人が「豆乳」を好むように、オートミールなどが昔からの身近な食材である欧米では、「オーツミルク」の味が評価され多くの方に選ばれている。結果、お店の棚での展開も他の素材に比べオーツミルクの品ぞろえが圧倒的に多い。

また、珈琲のクリーマーとしてや、パンやお菓子など、料理に幅広く使えて汎用性が高いのも魅力の一つ。既にカフェなどで必ずと言っていいほど選択できるなど、牛乳の代替として欠かせないものとなっている。缶コーヒーにもオーツミルクを利用したものが登場していた。

プラントベースチーズは、定番のスライス、シュレッドなどプロセスチーズ風から、カシューナッツをベースにしたクリームチーズやカマンベールタイプなどナチュラルチーズ風まで様々。イタリアのメーカーでパルミジャーノ・レッジャーノ風(パルメザンチーズ風)のものは、口の中でホロホロと砕けるような食感から味、香りまで、かなり本物に近い味わいが再現されていた。今後ますます、プラントベースチーズの選択肢が増えていきそうだ。

驚くべきはプラントベースエッグ(代替卵)だ。粉末として焼き菓子に加えるもの、液体状のものは4年前にもあったが、そこから“ゆで卵”として、そのまま食べられるものが登場。見た目はもちろん、白身や黄身の味や食感まで、言われなければわからないレベル。液体状のものでスクランブルエッグはできても、なかなか茹で卵は難しいと思っていたが、ここまで技術が進んでいるとは。目玉焼きがプラントベースで作れる、そんな時代はそう遠くないかもしれない。

その他、プラントベースシーフード(代替魚)としては、ツナだけでなく、プラントベース寿司(PLANT-BASED SUSHI)に入れるマグロやサーモン、その他、ホタテ風なども登場。プラントベースのカリフォルニアロール風(巻き寿司)は、シャリやネタの素材やいろどりにも工夫があって、見た目も美しく、冷凍タイプで手軽に食べられる。ブースは試食をする多くの人で賑わっており注目を集めていた。実際に食べてみると味も大変美味しく、プラントベース寿司は、今後日本でも商品化しやすいのではないかと思う。毎年、恵方巻の大量廃棄が問題になっているが、冷凍ならそういった部分も解消できるかも?

プラントベース市場は今後もますます伸びていくと推測はされるが、一方で、「PRECISION FARMENSTATION (精密発酵)」技術を使ったプラントベース食品が、一般消費者にまだ理解が広まっていない中、商品パッケージでも気づきにくい状態でじわじわと増えてきている。これについては、オーガニック業界の内外で懸念の声が上がっている。既に昨年、同エキスポで出展社があり、今年も数社ほど出展していたようだ。ナチュラルやオーガニック、健康をテーマとした展示会で、どこまで許容されるべきなのか、今後さらに議論が進んでいくと思われる。実際、すでにbetterland社のCOW-FREE-MILKに代表される製品が販売されている。今後は、PLANT BASED の文字だけで判断するのではなく、それがどうやって作られたか?もチェックしていかなければならない。

そんな中、「CLEAN LABEL(クリーンラベル)」といったワードもパッケージに記載されている商品が多くみられた。プラントベースフードは加工度の高いものも多く、はたしてこれが健康的な食品と言えるのか?を問う声も多い。オーガニックに代表される、誰がどこでどうやって作られたものなのか履歴がわかり(Traceability)、一般的に知られている素材など、加工度の低いシンプルな原材料(Natural & Simple Ingredients)を用いること、そしてその製造のプロセスなども、消費者に分かりやすく公開するなどの企業努力も求められている。ナチュラルや無添加といった表現から、今後“CLEAN”という表現が、食品業界で重要なキーワードとなってきそうだ。ただし、何をもってクリーンなのか?の明確な基準を作らないと、ナチュラル同様あいまいな表現のままとなってしまう。

次に目立ったのが「アップサイクル  ( Upcycling / Upcycled )」。Upcycled Food Associationは、アップサイクルされた食品成分と製品に対する世界初の第三者認証機関。環境にプラスの影響を与える余剰食品や副産物を使用して調達された(製造された)アップサイクルされた原料、製品であることを、マークを商品につけることで消費者にもわかりやすく提示する。本展示会でも、多くのブースで、これらのPOPを提示しているところが見られた。

日本でもSDGsの一環としてアップサイクルをコンセプトとした商品開発が進んでいる。日本で代表的なのは、例えば豆腐を作る時に出る副産物「おから」。そのままお惣菜用に使われるほか、ドーナッツなどお菓子にしたり、飼料に加工したり、乾燥させパウダー状にし、1つの加工食品として生まれ変わらせるなど、様々な形で利用されている。

規格外野菜を商品化したものが多いが、それがアップサイクルと言えるのか?と言うと、実際そうでもないかも?という製品もある。見た目の傷や、サイズが基準に満たない規格外野菜を安く販売することや、これら“も”使って調理する、となると、本来廃棄されものを再利用するという意味では共通部分もあるが、アップサイクルの本来の意味合いとは若干違ってくる。

そういった部分では、明確な基準をクリアした認証マークなどはあっても良いのだが、オーガニック以外にも様々な認証制度やマークなどが溢れており、その認証費用やマーク使用料などの費用がかさみ、それらのコストが製品の価格に転嫁されると本末転倒なのでは?という声も、オーガニック業界関係者から聞かれた。

ちなみに、日本の展示会であちこちにみられる「SDGs」のマークやバッチ、事業活動を通じてSDGsの目標を達成!なんて言葉は皆無。海外の方から見ると、日本で一斉に掲げている光景は少し異様に見えるらしい。世界中でサステナブルな社会の実現をめざす取り組みが進んでいるが、日本はもう少し肩のちからを抜いて取り組む必要があるかも、と、ここに来ると思ってしまう。オーガニックもプラントベースも、誰もが自由にアクセスでき、個人が自由に選択できるものへ。日本は少し遅れてはいるが、そこに向けて少しずつ変化していって欲しいと思う。

2023年気になる素材、キーワード

・PLANT BASED / プラントベース(植物由来)
※PLANT BASED MEAT (代替肉)は、ミート・ソーセージから、加工肉タイプのハム、ベーコンなどバラエティ豊かに。牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉風も。代替乳製品(ミルク・ヨーグルト・アイス・バター・チーズ)では特にチーズの選択肢が増えた。PLANT BASED EGGS (代替卵)は、粉末、液体から茹で卵タイプまで。PLANT BASED SEAFOODSは、ツナタイプから、寿司用サーモン、まぐろ、ホタテ、キャビア等、魚介類、魚卵まで。

・UPCYCLE  ( Upcycling / Upcycled )アップサイクル
Upcycled Food Association による認証マークが登場。展示会内でも該当する製品ブースにも掲示

・CLEAN LABEL・CLEAN EATING・CLEAN FOODS クリーンラベル・クリーンイーティング・クリーンフード
※“Natural”という表現から“Clean”へ。シンプルな素材(原材料)、シンプルな調理法、シンプルで認識しやすい表示

BEE FREE / ミツバチフリー(蜂不使用)のプラントベース蜂蜜・代替蜂蜜

・PRECISION FARMENSTATION / 精密発酵
※betterland社のCOW-FREE-MILK、Melibio社のPlant-Based Honeyなど、微生物を使って特定の成分を(たんぱく質など)作り出す技術。業界内からは懸念する声も。

KELP / 海藻
※従来の海苔、昆布などから、ふりかけタイプ、スナック菓子に配合したもの、プラントベースフードに使用するものなど、多数

・FERMENTED FOODS / 発酵食品(乳酸発酵の漬物、プロバイオティクス)
※腸活(GUT HEALTH)に注目。特にキムチ、コンブチャなど。

ORGANIC COLLAGEN / オーガニック認証コラーゲン

JACK FRUITS / ジャックフルーツ

PLANT BASED SUSHI ROLLS / プラントベース・カリフォルニアロール(プラントベース寿司)

・LUPINI BEANS / ルパン豆
※大豆の代替、植物性たんぱく素材の新たな食材として。

・YAUPON / ヤウポン

REGENERATIVE ORGANIC  / リジェネラティブオーガニック
※Regenerative Organic Certified (RO認証)

TEMPEH / テンペ

PLANT BASED CAVIAR(VEGAN CAVIAR)/ ヴィーガンキャビア・代替魚卵

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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