アメリカ、カリフォルニア州のバークレー市の公立中学校、MARTIN LUTHER KING MIDDLE SCHOOL(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア中学校)の「エディブル・スクールヤード」。「エディブル・スクールヤード」とは、日本語に直訳すれば「食べられる校庭」となる。
このエディブル・スクールヤード・プロジェクトが始まったのは1995年。もともとは駐車場だったキャンパス内のスペースを、アスファルトを剥がしてスクールガーデンに。学校内に菜園を作り、そこで収穫した作物を使ってキッチンで料理をつくり、食卓を囲む。これらを単なる体験実習ではなく、学校教育のカリキュラムに取り入れるという食育プログラムだ。
敷地内には、エディブルスクールガーデン、キッチンクラスのための建物がある。また、建物の外には、長いコミュニティーピクニックテーブルが設置されており、ここで生徒たちが食卓を囲むことも可能となっている。
畑を耕し、植物を植え、育て、収穫し、料理し、食卓を囲み味わい、残ったものは再び堆肥として畑へ。この基本となる循環を、活字からではなく体験から学ぶことができる。このような学びは、子供たちの心にも対しても、深い影響を及ぼしている。
もちろん、今行われているプログラムはすぐに完成されていたものではない。教師をはじめ専任のスタッフ、外部のサポートも受けながら、長い時間をかけて1つ1つ積み重ねていった結果だ。一番大変だったのは、さまざまな考えを調整すること、だったそうだ。違う教科の教師たちの間などでは、時に意見が食い違うこともあったという。「大事なのは話し合うこと」。20年近くの間、さまざまなアイディアを、話し合い、テストし、そしてその結果をシェアする。それを繰り替えしていくことで、良いものが生まれてきたのだ。もちろん、これからもそれは続いていくだろう。
さて、当時のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア中学校校長、ニール・スミスに提言をし、共にこの「エディブル・スクールヤード・プロジェクト」を推進していったひとりがアリス・ウォータースだ。1971年、サンフランシスコ郊外のバークレーに「Chez Panisse(シェ・パニース)」をオープンさせたアリス。1970年代当時のアメリカの、低価格、高カロリーで栄養の乏しいジャンクフード、ファーストフードが主流な食文化に一石を投じ、オーガニック農業や地産地消、スローフードを普及させた立役者でもある。彼女の食育活動により、地域やコミュニティーをまきこみ、教育に至るまで社会を変えていくこととなった。彼女の果たした功績は、大きい。
アリスの哲学は、今もスクールガーデン内の建物の壁に掲げられている。
The Philosophy of Alice Waters
- Eat seasonally.
- Eat locally and sustainably.
- Shop at farmer’s markets.
- Plant a garden.
- Conserve, compost, and recycle.
- Cook simply, engaging all your senses.
- Set the table with care and respect.
- Eat together.
- Food is precious.
- Cook together.
- 旬のものを食べよう
- 地元で持続可能につくられたものを食べよう
- ファーマーズマーケットで買い物をしよう
- 庭に食べられるものを植えよう
- 資源を大切に。堆肥をつくり、リサイクルに努めよう。
- 料理はシンプルに、五感をすべて使って。
- 食べ物に敬意を払い食卓を用意しよう
- みんなで一緒に食べよう
- 食べ物は尊いもの。
- 一緒に料理をしよう
*翻訳後の表現は、翻訳者により異なる場合があります。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。