ドイツ・アウグスブルグで開催されたオーガニック見本市 「BioSüd 2017」で感じた傾向、「オーガニック食品のインスタント化」そして「オーガニックレトルト食品の増加」。実際の現地オーガニックスーパーに行っても、やはりレトルト食品を中心にインスタントフードなどのラインナップが充実していた。

特に目を引いたのは、ミールタイプのレトルト食品。日本でレトルト食品というと、カレーやスープ、パスタソースやお粥、ご飯といったものが多いが、穀類や豆類を中心にスパイスなどで味つけされたもので、そのものが主食にもなり、温めるだけでライトミールとして食べられるようなタイプのものだ。ヘルシーなビジュアル系ミールということで、SNSでトレンドとなっている「ブッダボウル(BuddhaBowl)」のベースとしても、手軽に活用できそうだ。

クスクスやラザニアなどパスタ類を主としたものもある。味のバリエーションも豊富で、お湯で戻すタイプに比べ、断然食感が作りたてに近くて美味しい。しかも、すべてオーガニック認証されたもの。製品の多くはVEGAN(ヴィーガン)、GLUTEN FREE(グルテンフリー)対応など、食のスタイルによって選択も可能だ。

これらはみな常温保存。しかも、透明性の高いラミネート袋に印刷したものだ。オーガニック認証のレトルトのパッケージは、これらのタイプが主流となっていた。底の方を見ると中身が見えるので、食材の色や形、質感などもわかることで安心感もある。味の想像もつきやすく、見比べたうえで購入の決め手にもなりそうだ。底にマチがあるスタンドタイプなので、ディスプレイにも最適だ。

一般的にレトルト用の透明タイプの袋は、アルミタイプと比べるとガスバリア性能が劣る。日本だとオーガニックのレトルト食品(常温保存タイプ)は、まだアルミタイプのラミネートフィルムでできてるものがほとんど。白や銀色の無地のものに、表、裏とラベルシールを貼っているものが多い。店舗の方なら経験、記憶があると思うが、このアルミタイプのもは、品出しの際や、何度も出し入れしたり落としたりするなど扱い方によって、小さな傷ができやすい。中身には問題がなくても、売り物にならなくなってしまう場合も。また、手貼りのラベルシールは、曲がってしまったり空気が入ってしまったり、貼り付け位置が商品によってばらつきがでてしまったりということも起こる。シールの紙質やデザインによっては、少々安っぽさを感じてしまうことも・・・。

レトルトパックを箱に入れた製品も多いが、包装資材にコストがかかる上無駄な資源を使うことにもなる。消費者側から見れば、ごみが増える。それならば、レトルトパックに直接印刷すれば?と思う方も多いだろうが、問題は製造ロット、そしてコストだ。そもそも小ロット生産を低コストで実現する工場も少ない。たとえ小ロットで製造できたとしても、包装資材そのもののロットが大きかったり、印刷代やデザイン費、さらには認証費用などもかかる。包装資材の在庫管理、原材料や表記の変更などのリスクを考えると、なかなか中小規模の企業では手を出しにくいのが現状。日本の有機加工食品がなかなか増えない理由のひとつでもある。

レトルトは一般的に密封高温加熱の際、食感や香り、色なども変化しやすいが、近年の技術革新により保存性もさることながら、作りたてのような味や食感を保つなどの品質面においても徐々に向上しているようだ。日本でも、電子レンジでそのまま温められるレトルトは増えている。

ちなみに、レトルト以外でも、お湯を注ぐだけでできるインスタントフードもやはりミールタイプのものがトレンドのよう。プラスチックフリーで紙袋入りのもの、カップ入りのものもある。

チアシードデザートは、あらかじめライスミルクやアーモンド、ラズベリーやバナナフレーク、アガベシロップが一緒になっていて、水を注いで混ぜるだけで美味しくできるもの。火を使うことなくそのまま食べられる。

「BioSüd 2017」の新製品コーナーで見かけた、BIOのカップケーキMIXは、マグカップに入れて電子レンジで簡単につくれるものが、オーガニック認証。

オーガニック志向の消費者は、手作り、自炊派という方も多いが、仕事や家事、子育てなど、何かと忙しい現代人。市販のお惣菜や冷凍食品やレトルト食品などで簡単に食事を済ませる人も増えている。仕方なくそのような食生活を送らざるを得ない人もいる。災害の多い日本においては、非常食などのニーズもあるだろう。消費者のライフスタイルの変化、嗜好、要望の多様化にあった商品開発が、オーガニック食品の分野で望まれている。今後、こういったオーガニックのレトルト食品の輸入は増えていくと思うが、日本人の好みの味でないことも多い。是非、日本国内での製造開発をお願いしたい。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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